ABC友の会の仲間たちは何歳だった? 追記


 ABCの友メンバーの年齢推察をしたところ、やはり読み落としがあり、幾つかご指摘をいただきました。
 まずこちらの文章から。(あやさん、ありがとうございました!)

「二十歳の華奢な青年が、有無をいわさぬ動作で、がっしりとたくましい人足を、葦のように折曲げて、泥の中にひざまずかせた」(4巻p426)

 バリケードで、アンジョルラスがル・カビュックを銃殺するシーンです。この二十歳の青年とはもちろんアンジョルラスのことです。
 しかし、これ以前に既に「二十二歳なのに十七歳ぐらいに見えた」(3巻p104)と書かれているのですから、彼がこの時点でぴったり20歳であるはずがありません。


 そこで、もう一ついただいたのはこちら。(りっかさん、ありがとうございました!)

「マリユスはこの五年間、貧乏と困苦と窮迫の中に暮してきた」(3巻p234)

 これは1832年現在の描写です。マリユスの一人暮らし期間は計算すると四年間のはずですから、ものすごく数字に几帳面なはずのユゴーが、ここでは年数を四捨五入して書いているらしいのです。
 ということは、上記の「二十歳」も同じようにとらえることができそうです。
 とはいえ、26歳を「二十歳」と書くことはあまりなさそうです。ですので、ここで彼の紹介文を受けて、この時点で22歳だったと考えてみます。
 三巻の紹介文の年齢=享年と考えると、それぞれ次のようになります。


 整理してみます。

1828年1832年
マリユス 18歳 21歳
アンジョルラス 18歳 22歳
レーグル 21歳 25歳
ジョリー 19歳 23歳
クールフェラック 21歳 25歳
グランテール 21歳 25歳


 クールフェラックとグランテールは、前回書きましたようにバリケード当日の描写からの逆算です。
 全体的に思いっきり若返ってしまいました。現代とは世相が違いますから、こんな年若い青年達が政府転覆を企んだりするのは珍しくも不自然でもなかったかもしれません。じっさい、マリユスは18歳で会合への参加資格ありと見なされて、立派に演説なんかもしていたわけですし。

 と、可能性があるとはいえ、やはり私には三巻の紹介文は1828年時点のものだと思えるのと、全体の平均年齢が低すぎることから、この説は腑に落ちないものがあります。
 明確な結論は出せませんが、あとは個々の好みにお任せすることにして、ここで筆を置きたいと思います。