プルヴェールは「服のセンスがない」?
彼はもの柔らかに話をし、頭を下げ、目を伏せ、きまり悪げにほほえみ、ぞんざいな服装をし、物なれない様子をし、わずかなことに赤面し、非常に内気だった。それでもまた勇敢であった。(三部四編一/豊島与志雄訳)
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海外レミゼフィクを読んでいると、時々服装をからかわれているプルヴェールを見かけることがあります。
大抵は彼のファッションセンスのなさや、おかしな色の取り合わせの服をABCの誰彼がからかっているんですが、和訳のどれを見てもその理由がわからなくて、それでもネット上でファンの間で作られた設定にしてはあまりに具体的すぎるし多くの書き手さんがこのネタを使っているので、ずっと気になっていました。
で、英訳版を調べてみることにしました。
上記の「ぞんざいな服装をし」という部分はWordsworth版では"dressed badly"となっています。
この書き方だと、単に服装に構わない、だらしないという意味だけではなく、「おかしな格好をしていても気にしない、もしくはわからない、オタクっぽい」というニュアンスになるそうです。
これを説明してくれた英国人の先生は「いかにも詩人らしいことだ」とつけくわえてくれましたが、そうなんですか。うーん、なんとなくわかるような。
と思っていたら、詩人の服装についての描写が原作の中にもう一カ所ありました。
「あの男はいったい何だい。」
「あれか、」とクールフェーラックは言った、「まあ詩人だね。詩人って奴はよく、兎の皮売りみたいなズボンをはき、上院議員みたいな外套を着てるものだ。」(三部八編十五章)
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彼は「大きすぎて身体によく合わないま新しい外套をつけ、泥にまみれてるぼろぼろになったひどいズボンをはいて」いるちぐはぐな格好のテナルディエを見て、冗談で「詩人」と言っているのですが、詩人というのはこんな冗談の種になるくらい、一般的に妙な身なりをして構わないものだったんでしょうか。
和訳では「ぞんざいな服装」「服装にかまわず」「だらしない服装」などの書き方をされていて彼のセンスについての含みは感じたことがありませんが、英訳は何種類かチェックしたところ、Wordsworth版とGalley Press版が"dressed badly"で、Penguin Classics版ではちょうどこの服装の部分が抜け落ちていました。
上のクールフェラックの詩人の服装についての見方からすると、この部分は英訳の方が和訳よりも原文のニュアンスをより正しく伝えているようですね。
海外レミゼフィクで服装を笑われているプルヴェールがいたら、そういう理由のようです。
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