懲りるわけがない





 アーサーは暗闇の中で目を覚ました。
 途端に自分がどこにいるのかわからなくなった。彼はパニックを起こしかけたが、次の瞬間、< 黄金の心 >号に乗っているのだということを思い出した。
 慣れるわけがない。朝日の見えない朝なんて。
 心の中で不満を呟きながら、アーサーは手を伸ばして、昨夜寝る前に椅子の背にかけておいたガウンを取ろうとした。
 しかしその手に当たったのは、何か冷たい金属製のもの。アーサーは未だ眠気の残る頭に大きなクエスチョンマークを乗せてベッドを出、つまづきながら灯りのスイッチまで部屋を横切っていった。
 部屋が明るくなると、確かに椅子は空っぽだった。部屋のどこにもガウンは見当たらなかった。舌打ちをして、アーサーはパジャマのままで部屋を出た。


 ドアの立てる心地よさげな溜息を無視して、アーサーはフォードの部屋に入っていった。
 廊下から差し込む光の中、彼は腕組みをして、背の低い友人が丸まって眠る様子を見下ろした。
 フォードは、アーサーのガウンにくるまって平和そうに眠っていた。口の端には笑みのようなものを浮かべ、ガウンのあわせを両手でしっかりと握って。まるでお気に入りの毛布を掴んで離さない小さな子供のような光景。
 アーサーは長い長い溜息を吐くと、うんうん、と何度か頷き、それから思い切り息を吸い込んだ。

「いい加減、僕のガウンを盗ってくのをやめろ!」

 フォードはベッドから転げ落ちた。



End.





 note:練習も兼ねて英語で書いてみた短文でした。自分の作品なので、翻訳はかなり自由な感じです。タイトルは、まあ、フォードが懲りるわけないよなってことで。

 
 2011.5.29.